©Yuya Miyamoto
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INK
N町の増築小屋
WHAT
住宅
WHERE
伊豆の国市
WHEN
2023.12
静岡県伊豆半島の中央部に位置する丘陵台地。
もともとは別荘として建設した2階建ての住宅に余生を過ごすために移り住んだが、生活スタイルに家のプランが馴染まなかった。そこで、現在の生活の中心ともいえる畑作業をするための倉庫(作業場)と趣味のための書斎を、母屋の南側に畑に面して増築することになった。
計画としては、前面道路から裏の畑への動線上に半屋外の倉庫(作業場)を配置し、屋外での作業や物の運搬と収納、増築した書斎への出入りなど、新たな動線のハブとなるような位置づけとしている。書斎は母屋と室内でもつながっており、内外をまたいで回遊性を持たせた。
空間は外形がそのまま内部に現れているシンプルなものだが、二重の外壁構成や半屋外と内部のつながりなどが多層的な状況を生み出し、内と外がグラデーショナルにつながる。多層的な構成には、風の通り抜けや採光・遮熱など環境の調整機能をもたせることも意図している。
増築棟のボリュームは、雨仕舞の観点からも母屋と同じ勾配の片流れ屋根として全体の一体感をつくりつつ、外壁は母屋とは対比的な明るい色味を採用した。
また、母屋は眺望の良いに東側に開いているのに対し、増築棟は南の畑に開く構成としている。
南側のファサードは、増築による畑への圧迫感を軽減することや畑との親和性、日射のコントロールなどの目的でポリカの波板を採用し、外壁の外側に光のスクリーンとして設えた。庇、RCのベンチと流し台などが畑に面して場をつくり、ポリカと下地の木格子は、日中は柔らかい光を内部に届け、日が暮れだすとぼんぼりのように外を照らす。
そのほか、通気を確保しながら動物に荒らされない工夫をした収納庫や、作業しながら隣人とおしゃべりできる窓など、周囲との関係を丁寧に設計した。
この小さな増築が部屋を増やすことだけを意味するのではなく、生活動線を再編集することに寄与することで、これからの新たな生活を豊かに支えてくれることを祈っている。